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F字孔は、ヴァイオリンの表板にあるFの文字に似たサウンドホールのことです。このページは私のメッセージやエッセイを書いてゆくページです。

5月30日のご報告と、ベートーヴェン全曲シリーズ演奏会を終えて


紫陽花の美しい季節になりました。
5月30日(日)には私のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Vol.4にご来聴くださいまして誠にありがとうございました。今回のシリーズ最終回では、それぞれキャラクターの異なる3曲の作品(第2番のソナタ、ハ長調の協奏曲断章、第9番クロイツェル・ソナタ)を演奏いたしました。私は回を重ねるごとにベートーヴェンがそう書かずにはいられなかった音楽を演奏できる喜びを感じており、また今回もさらに充実したデュオ音楽をピアニストの藤井一興氏(約15年前からたびたび共演させていただいている)と演奏でき、二つの楽器の対話と融合を皆様にお楽しみいただけましたことを嬉しく思います。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのような文化遺産を今の世の中で皆様の前で演奏できること、そしてベートーヴェンの精神世界を知っていただけたことは、何よりもの幸せと思います。

今回で全4回のシリーズ演奏会を終えることが出来ました。あっという間の2年間であったと感慨深いものを感じ、無事完結できましたことを心から幸せに思います。
2008年4月に王子ホール、同年9月に王子ホール、2009年10月にカザルスホール、そして今回2010年5月に東京文化会館小ホール、の全4回で『ベートーヴェンの全10曲のソナタ+2曲のロマンス+ヴァイオリン協奏曲断章ハ長調』を完奏し、お蔭様で多くの方々から「深いところから湧き上がってくる音楽、そしてベートーヴェンの内面の優しさや崇高さを余すところなく表現されていた」とおっしゃっていただき、そのように感じていただけたことを大変嬉しく思います。ベートーヴェンの音楽は私にとって人生の大変な時でも常に心を励まし続けてくれる特別な存在です。全曲演奏をすることによってまた新しい美しさと、新たな音楽の「間(ま)」を発見できたこともよかったと思います。
これからも、日々ヴァイオリンの音色の多様性の研究と追求を重ねてまいりたいと思っております。「音楽」はその日その時一度きりのものですから、何がどのように作用するかわからない未知なるもので、常に自然に生まれてくるが如く、全身全霊を傾けて演奏する以外ないと思っております。

このシリーズ演奏会にいらしてくださいました多くの皆々様、ご尽力くださいました方々、そして、Vol.1,Vol.2の共演ピアニストの加藤洋之氏、Vol.3,Vol.4の共演ピアニストの藤井一興氏に、心から感謝いたしております。
また、演奏会で皆様にお目にかかれます日を楽しみにいたしております。

尚、7月8日(木)にNHK放送センター509スタジオにてNHK-FM「名曲リサイタル」のための公開収録があり、それに出演しますので、お時間ございましたら、往復はがきでNHKまでお申し込みの上、ご来場くださいませ。ベートーヴェン、エルガーの作品を、お話を交えて演奏する予定です。

土田越子