ホーム >> F字孔 >> 紅葉の奈良でのリサイタル

F字孔は、ヴァイオリンの表板にあるFの文字に似たサウンドホールのことです。このページは私のメッセージやエッセイを書いてゆくページです。

紅葉の奈良でのリサイタル

10月27日(火)に、奈良の国立奈良女子大学の「奈良女子大学記念館」(重要文化財)において、奈良女子高等師範学校・奈良女子大学創立100周年、昭和34年卒業50周年の記念を祝して私を呼んでくださって、「土田越子ヴァイオリンリサイタル〜古都奈良で奏でる珠玉の名曲のしらべ〜」(卒業50周年記念会コンサート実行委員会主催)を開催してくださいました。ご尽力くださいました主催者の方々をはじめ、お世話くださいました大変多くの方々、有難うございました。

この記念館は重要文化財に指定された歴史に残る建築物であり、宮殿のような空間です。約300人収容だそうですが、チケット発売と同時にほぼ完売したそうで、当日は当日券のお客様のために補助椅子を出したり、卒業生の方々はもとより一般の方々も本当に多くご来場くださいました。今回の曲目はどれもヴァイオリンの珠玉の名曲で、無伴奏の曲、ソナタ、また馴染みのある名曲など各国の作品を集めた選曲にして、またトークを入れてほしいとのことでしたので、日頃から音色の多様性を研究し続けていることなど、私の演奏と演奏の合間のトークもお楽しみいただけまして、私も幸せでした。

何よりも、皆様の数々の思い出や「人生」が詰まっている記念館だからこその特別の空間で、皆様と共有できた時間は素晴らしいものでした。私はもちろん卒業生ではありませんので初めて訪れた記念館でしたが、なぜかとても懐かしく感じられました。中庭の紅葉も鮮やかで、窓から見える若草山の借景と相まって、時空を越えた奈良の地でのリサイタルは、私もピアノの加藤洋之さん共々、大変良い思い出となりました。

この記念館には、有名な「100年ピアノ」があり当初使用予定でしたが、ヴァイオリンは通常ピッチがA442なので、100年ピアノは大変古くピッチを442にはしてはいけないということだったので使用できず、スタインウェイ(80年位前のものと聞いております)を使用しました。私の演奏しているヴァイオリンは300年以上前のものですし、建物も楽器も古都奈良で出会えたことを喜んでいるかのようでした。古く価値のあるものを存続させ守っていくこと、そしてそれには目には見えない苦労と努力があり、そういうすべての思い入れと価値観のもとで偉大な楽曲を再現し発展してゆける素晴らしさを感じました。

リサイタル終演後、皆様のご要望があり全く突然頼まれたのにもかかわらず100年ピアノの演奏をご快諾くださってお弾きになられた大阪大学名誉教授で工学博士の園田昇先生のピアノソロの演奏、とてもよかったです。サップライズにお客様も喜んでおられました。

翌日は、「第61回正倉院展」がちょうど奈良国立博物館で開催されていましたので、一度行きたいと以前から切に望んでいたので、行ってまいりました。数々の宝物を拝見できて嬉しく思いました。光明皇后直筆の「楽毅論」(がっきろん)、そして、紫檀木画槽琵琶(したんもくがそうのびわ)に特に心惹かれました。私は子供の時分から考古学や日本の古代史に興味がありまして、今でも好きなのでこのような展覧会に行くと血が騒ぐのです!貴重な時間を過ごせました。

楽しい奈良での2日間でした。

土田越子